今しぼりの始まり 綾部に来るまで

社会全体でも、それまで認められていなかった雇用期限を限定した派遣雇用制度が一般化して、卒業生の中でも、少なく無い人たちが、正規採用では無い「期限付き採用」で働くようになってきていました。そして、すぐに教育の世界でも、公立、私立の違いはあっても、非正規雇用の教員採用が取り入れられるようになりました。
僕の勤務していた学校でも、先生になりたいと願う情熱あふれる若者が、3年間の期限付き採用で、雇用されるようになりました。
期限付きとはいえ、念願の教師に採用されて、授業だけでなくクラブ顧問も引き受け、他の教員以上に情熱を注ぐ姿は、頼もしく、微笑ましくも思えました。
しかし、三年目の雇用期限の最後の年を迎えると、途端に意欲を失い、その熱意あふれていた青年教師が、自暴自棄に変貌してしまいます。二学期の終わりには、また次の仕事を探さねばなりません。担当する子どもたちを大切にしなければならない筈の、自分自身が、切り捨てられるのですから、そうなるのは自然なことです。
特に共働きの助成教員が、人として最大の喜びとなるはずの「妊娠」が、契約打ち切りにされる学校まであるのが現実です。
子どもたちに、生きる力を育てることが役目である学校の先生たちの中に、差別されて苦しむ若い教員がいて、崇高な理念を教えることは不可能です。「生徒に差別はいけないよ」と、心から言えない後ろめたさを抱えて、学校も、社会も病んでゆくのです。
「お金のため」歪んでゆくものが、現代には溢れているように思えました。
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